コラム記事一覧

  • 神無月晦日

    10月も今日で終わり、今年も残すところあと2ヶ月となりました。「つい、この間お正月をしたのに」なんて思っているのは私だけではないのではないでしょうか?!忙しさにかまけて、このコラムもいつも月末に慌ただしく更新する習慣?になり、少し反省しています。東京は10月6日に18号、13日に19号と大型台風が続きました。両台風ともすごい勢力!との予想のわりには比較的被害が少なくてよかったです。それでも被害にあわれた方々には、心よりお見舞い申し上げます。
    三井記念美術館で「東山御物」展、東京国立博物館で「国宝」展の各々のレセプションに行きましたが、素晴らしかったです。感動しました。10月11日と22日と続いて2回、安村敏信氏の江戸絵画の講演を聴く機会がありました。11日は東京美術倶楽部の公開美術講座、22日は東京芸術学舎の講義だったのですが、とても勉強になりました。安村さんの深く鋭い視点と何より江戸絵画に対する愛情を感じました。安村さんと私は「聴いて・見て・触る 浮世絵ナイトレクチャー」という講座を企画(国際浮世絵学会 × 日本アート評価保存協会)していて、第1回は12月1日に「忠臣蔵の浮世絵」というテーマで浅野秀剛氏(国際浮世絵学会理事長・大和文華館館長)に講演してもらいます。ご興味のある方はご連絡ください。10月17日〜19日は東美アートフェアが開催されました。3日間で5000人近い来場者があり盛況でした。浦上蒼穹堂は「原始青瓷」展と題して中国西周時代(1050-771BC)から戦国時代(475-221BC)までの灰釉陶を約30点出展しました。小品が多かったのですが大へん好評でした。特に美術館の学芸員や学者、研究者の方々がとても熱心に見ていかれ、いろいろ意見交換して有意義でした。従来の古美術愛好家の他にコンテンポラリーアートのコレクターが何点も買っていかれたり、売上も上々でした。
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    10月12日、智美術館で中澤富士雄氏と川瀬忍氏の対談形式による「旅する ー 窯址探麗・美瓷麗工 ー 中国やきもの紀行」という講座がありました。掛け合い漫才のようで実に楽しく、且つためになる話がたくさんでてきました。実はこのお二人と私の3人で18年前、景徳鎮や上林湖に行った時の話や写真が沢山出てきて、懐かしいやらおかしいやらで内輪うけしてしまいました。3人とも本当に若かったんですね。講演後も余韻を楽しむように3人で語り明かしました。10月25日はその川瀬忍さんが席をもたれるというので久々に大磯茶会に行ってきました。大磯茶会も今年で10年目ということです。川瀬忍さんは茶席に新石器時代の水注や高脚杯、前漢時代の朱彩大耳盃など、まだお茶やお茶の概念がない時代のものを見事にあしらわれていて、とても開放的で健康的な空間を作られていました。中澤富士雄さんとも同席し、お酒を酌み交わして楽しかったです。もちろん抹茶も美味しかったです。

  • 美術の秋 到来

    もうお彼岸なんですね。今年は9月に入ってからは涼しくなり、とても楽でした。
    今日は東京国立近代美術館の「菱田春草」展の内覧会へ行ってきました。とてもよかったです。美術学校を卒業してから36歳で亡くなるまでの短い間、これだけの作品を残すなんてやはり天才だと思いました。しかし生前はあまり評価されず、絵も売れなかったということを聞くと、世の中の評価というのもいろいろ変わるものだと考えさせられました。私も名作「菊慈童」(飯田市美術博物館蔵)が前の持ち主から現在の美術館に収まるときに深く関わりましたので、とても懐かしく見てまいりました。この作品が春草25歳の時に描かれたことをあらためて知り、感じ入りました。永青文庫所蔵の「黒き猫」(重文)は10月15日〜11月3日の限定公開ということで今日は見られませんでした。永青文庫といえば去る9月13日、東京美術倶楽部主催の公開美術講座に細川護煕先生に来ていただき「細川家 美と戦いの700年」という講演をしていただきました。なんと国宝1点(螺鈿鞍 「時雨」)、重要文化財3点(「織田信長自筆書状」、「明智光秀覚条々」、「宮本武蔵 紅梅鳩図幅」)、そして白隠「達磨図」、梅原龍三郎「紫禁城」(50号)を東京美術倶楽部の重文室に展示していただくという贅沢で有り難い講座でした。私も同講座の責任者として朝8時から美専車で、それらの美術品を借用に参りました。その日のうちにご返納したのですが、無事に終わるまではやはり大へん緊張しました。しかし展示作品に則した細川先生の興味深いお話の中には、日本の歴史が少し変わるようなものもあり、受講された方々は大へん熱心に聞き入っておられました。永青文庫竹内館長からも懇切丁寧な列品解説があり、皆さん大へん満足されて喜んで帰路につかれました。東京美術倶楽部主催の文化事業としても特筆すべきイベントだったと思います。
    9月14日(日)、三島市にある放送大学で「浮世絵に描かれた富士山」という講演をしてきました。北斎と広重の「富士」の描き方の違いなどを中心に1時間半、パワーポイントを用いてお話しましたが、さすが富士山のお膝元、受講者の方々が大へん熱心でいろいろな質問も出て、盛り上がりました。今までやったことのないテーマで講演をするのは、自身でもいろいろ考えたり調べたりするのでとても勉強になります。太宰治の「富嶽百景」に富士山の頂角の話が出てきますが、それも実際に作品で検証しました。太宰は北斎の富士の頂角はほとんど30°くらい、エッフェル塔のようだと書いていますが、実際に計測するとそんなに鋭角ではありませんでした。
    9月19日(金)、日本経済新聞社の本社レクチャールームで「北斎漫画の魅力」という講演をしました。これは現在、上野の森美術館で開催中の「ボストン美術館 浮世絵名品展 北斎」に因んで企画されたものですが、約30名の受講者の方々には私の講演の後、「北斎漫画」のオリジナル本(15冊)を手に取って鑑賞していただきました。皆さん大へん喜んでおられました。その後、柳橋の「亀清楼」で江戸料理を堪能し、最後は元浅草の誓教寺にある葛飾北斎のお墓に皆でお参りしました。引き続き同日夜は、スカイツリーのレストラン634で「酒食の会」がありました。今回は福井県の銘酒「黒龍」の宴でした。創業文化元年(1804)の老舗でありながら、7代目蔵元水野さんは、同じ醸造酒としてのワイン同様に日本酒を熟成できないかと試行錯誤を続け、少量で高品質な酒造りだけを追求し続けているとのことでした。どのお酒もとても味わい深く美味しかったです。私は相変わらずほろ酔い美術講義をしたのですが、スカイツリーの周辺には、ちょうど昼に訪ねた両国橋、待乳山、浅草などが眼下に見え、不思議な親近感がわいてきました。

  • 残暑お見舞い申し上げます

    猛暑が続き辟易としておりましたら、週末は台風11号の襲来で全国的に豪雨による甚大な被害が出ました。そのような中、昨日予定通り箱根の岡田美術館で『北斎漫画』初編刊行200年記念講演会をして参りました。新幹線やロマンスカーが遅れたり運休したり、小田原から美術館への道路が倒木で通行不能になったりといろいろ大へんでしたが、その割にかなり多くの方々が来場されました。小林忠館長のご挨拶の後、私が約45分間「北斎漫画」について講演し、凸版印刷株式会社の内山氏が「大画面で楽しむ北斎漫画」と題して、私と一緒に3年半に及ぶ「北斎漫画」デジタルアーカイブ化をした成果を画像を中心に紹介されました。この講演会は国際浮世絵学会第94回研究会も兼ねており、一般の受講者に混じって企画委員長の樋口氏や阿美古さんはじめ研究者の方々もかなりいらっしゃいました。凸版も幹部の方(中村氏、佐伯氏)はじめデジタルアーカイブを実際に作り上げた高橋氏や山内さんも参加されました。皆さん台風の中、大へんな思いで美術館に集結されたのですが、お陰さまで講演も好評裏に終了し、最後は皆さんと笑顔でお別れしました。
    現在、岡田美術館では「かわいい生き物たち」という特別展が開催中(7月3日〜9月30日)ですが、展示品の中に私から以前お買上げいただいた作品が2点あり、とても懐かしい気持ちになりました。岡田理事長とも久々にお会いすることができ、大へん嬉しかったです。

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    少し前になりますが7月24、25日と山形美術館に行ってきました。山形美術館開館50周年特別展「細川家の名宝と細川護煕の風雅」の開会式に出席するためです。細川家の歴史を伝える永青文庫所蔵の国宝、重要文化財をはじめとする名宝の数々と18代当主細川護煕氏の陶芸、書、水墨画から大作の襖絵まで多彩な作品群が一堂に展示されています(7月25日〜8月24日)。
    24日夜は知事市長主催の公式晩餐会の後、細川護煕先生ご夫妻、竹内順一永青文庫館長、加藤千明山形美術館館長、淺木正勝東京美術倶楽部会長と私の少人数で内々の小宴をもち、大へんうち解けた雰囲気で楽しい話に花が咲きました。翌25日朝の開会式では、細川護煕先生が細川家700年の歴史を伝える永青文庫の所蔵品とご本人の作品群について端的かつ印象的に語られ満場の喝采を浴びておられました。細川家は幽斎、三斎以来当代に至るまで文武両道に秀でた家系であることをあらためて認識しました。

    一昨日8月9日(土)、共通の友人の計らいで、小野寺五典防衛大臣にお会いしてきました。防衛省の大臣室で少人数で数時間ゆっくりお話したのですが、新聞やテレビで見るのと同じく実に誠実な方であるという印象を持ちました。まさに日本の防衛の中枢にいらっしゃる人物なのに、とても気さくで優しく謙虚な方でした。こういう防衛大臣ならば、有事の時でも的確な判断と素早い運動神経でうまく対処されるであろうと国民の一人として頼もしく思いました。

    明日8月12日(火)から19日(火)まで夏休みをいただきます。ここのところ休みらしい休みが1日もありませんでしたので、少し骨休めするつもりです。皆さまもよい夏休みをお過ごしください!

  • 今度の日曜日(7月20日)22:00〜 BS日テレ「コージ魂」に出演します

    お暑うございます!ここのところ、真夏のような暑さが続きますが、皆さま如何お過ごしですか?
    まだ梅雨は明けていないんですよね?!本当に参ってしまいます。

    昨夜7時半からアートフェア東京ラウンジで講義をしてきました。これはアートフェア東京2015 プレイベントの一環で、私は「ザ☆浮世絵 バック・トゥー・ザ・江戸時代」というタイトルで6月18日、7月2日、7月16日の3回、浮世絵についてお話をしました。第1回「北斎漫画を知り尽くす!」、第2回「なぜ浮世絵は生まれたのか?江戸時代の最大の謎に迫る。」、第3回「みてもいい?春画を知り尽くす。」ということで毎回パワーポイントと本物の浮世絵版画をお見せしながら各回約2時間の短期集中講義でしたが、受講生の方々が大へん熱心でよかったです。

    7月4日は「蕎麦切宮下 三田綱町」で宮下大輔さん、島田律子さん主催の七夕の宴「酒食の会」があり、私も例の如くほろ酔いミニ講義をいたしました。今回は「出羽桜酒造」、「豊島屋本店」、「人気酒造」、「石鎚酒造」の4酒蔵が自慢の日本酒を提供、蕎麦懐石と合わせて60名を越す参加者が大いに盛り上がりました。私は七夕に因んだ北斎と広重の浮世絵版画(もちろん本モノ)作品を展示解説しましたが、ここでも熱心な方々からいろいろな質問を受けました。三代豊国「東都両国川開之図」(花火の図)の三枚続も時節柄大好評でした。

    予告ですが8月10日(日)箱根の岡田美術館で 『北斎漫画』初編刊行200年記念講演会をいたします。「大画面で楽しむ北斎漫画〜北斎が描いた江戸の人々・生き物たち〜」という題目で、私の講演とこの3年間一緒に『北斎漫画』デジタルアーカイブに取り組んでいる凸版印刷文化事業推進本部の内山氏が『北斎漫画』を大画面で皆さんに見ていただく趣向です。岡田美術館は昨年秋、箱根小涌谷にオープンした本格的美術館です。よろしければ、この機会にどうぞお出かけください。


    さて、7月20日(日)22:00〜BS日テレ「コージ魂」にゲスト出演いたします。
    加藤浩次さんと私が1時間に渡り、本気対談いたします。既に収録は終わっていますが、どのように編集されてオンエアされるのか全く分かりませんので、正直なところやや(かなり)不安です。
    どうぞ、よろしければご笑覧ください。


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  • ご無沙汰しております

    前回のブログから1ヶ月以上たちました。梅雨にも入り、ブラジルではサッカーのワールドカップが開幕されるなどいろいろありますが、いかがお過ごしですか?
    私はこの間、けっこう忙しくしておりました。実際、日曜日も返上で国際浮世絵学会春期大会(4月から総務委員長を仰せつかりましたので、いろいろ雑用があります)や東洋陶磁学会総会(監事として会計監査報告をしました)に出席したり、本業の方では香港のオークションへ参加したりしました。クリスティーズ香港のスプリングオークションでは出来高が総額400億円に達したそうです。日本でのオークションや交換会も盛況ですが、やはりケタが違う感じがします。
    慶應義塾大学アートマネジメントの講義も6月6日、三田で無事やってきました。今年で15年目になりますが、相変わらず学生さんたちは熱心に私の話を聞いてくれます。世界のアートシーンの現場報告のようなことも話しますので興味が湧くのかもしれません。そう 日本人、特に若い世代には美術品をもっと身近に感じ、好きになってほしいです。最後に残るのは文化ですから!
    東京スカイツリー展望デッキのSky Restaurant 634でも、5月15日と6月12日の2回「酒食の会」が催され、私もミニレクチャーをいたしました。前回2月26日は「獺祭」の桜井社長とコラボをさせていただきましたが、今回は5月がシャンパーニュメゾンPerrier-Jouët(ペリエ・ジュエ)、6月が秋田の銘酒「新政酒造」の若き社長佐藤祐輔さんとご一緒しました。両方とも牧村シェフの料理によく合いとても美味しかったです。私は「浮世絵とジャポニスム」と「北斎と広重の比較」について本物をお見せしながら、ほろ酔いでお話をしました。素敵な空間で美味しい食事やお酒に舌鼓を打つことは誰もが望むところでしょう。そこにプラス目と心にもご馳走をということで、本物の美術品を若干の解説とともに見ていただく趣向です。参加された方には大へん好評でした。
    毎回このユニークな企画をされている宮下大輔さんとは旧知の仲ですが、「美食同源」を念頭において、いろいろ展開していきたいと話し合っています。

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  • 5月11日夜8時日曜美術館「世界を驚かせた北斎漫画」

    新緑に満ちた爽やかな季節になりました。皆さまゴールデンウィークはどのようにお過ごしになられましたか?私はニューヨークやスイスからのお客様が何件か重なり、けっこう店に出ていました。彼らから見ると、5月にこんなに長い休日があるというのは驚きのようです。
    さて、4月下旬に開催された東京アートアンティークはおかげさまで盛況でした。蒼穹堂には初日(木)78名、2日目(金)85名、最終日(土)は123名の方がおみえになりました。この催しもかなり定着してきたようです。せっかく来ていただいたのに、私が留守をしていた時間帯もあり、お会いできなかった方もかなりいらっしゃいました。失礼いたしました。どうぞ東京アートアンティーク開催期間中でなくとも、お気軽にお越しください。お待ちしております。
    先週の日曜日、5月4日の日曜美術館(Eテレ9時〜)はご覧になりましたか?
    45分枠で「世界を驚かせた北斎漫画」が放映されましたが、けっこう面白かったです。制作したプロデューサーやディレクターの方との事前の打ち合わせでも、「北斎漫画」の画像をバンバン出してその内容・面白さをまず視聴者にお伝えすることを第一義にしようという方針でした。私のコレクションから摺りの早い「北斎漫画」(初編〜15編)を2日半かけて撮影したものを編集、音楽や語りを入れて興味深い番組になっていました。私も冒頭、中頃、最後と3回ほどインタビュー出演していますが、どのような映像なのか私も一切知らされていなかったのでやや不安でしたが、話をするときに目をつぶっていたこと以外はまずまずというご意見を何人かの方からいただきました。西洋美術館館長馬渕明子さんの「北斎漫画」がジャポニスムに与えた影響についてのお話も大へん勉強になりました。
    お見逃しになった方は、明日夜8時より再放送(Eテレ)がありますので、ぜひご覧になってください。

  • 明日から東京アートアンティーク開催

    2ヶ月のご無沙汰でした。
    3月初めにアートフェア東京2014が出展ギャラリー180軒で開催されました。いろいろなメディアに取り上げられ入場者総数約5万人(昨年より10%増)と大へん好評のうちに終了しました。非公開ですがセールスも活発だったようです。私どものブースも大勢のお客様がお越しくださり、NHKのニュースにも取材を受け、「北斎漫画」もクローズアップで放映されました。またセールスの方も、ある美術雑誌の速報では「浦上蒼穹堂は中国古陶磁は12点中10点が売れ、北斎の版画も大人気で60点中51点が売約」と報じられました。会期終了後行われたボードミーティングでは全体総括を行い、今回は充実した展示とプログラムによって盛況であったことや次回への問題点などいろいろ話し合いました。来年の開催日程は2015年3月20日(金)〜22日(日)に決定しました。
    アートフェア東京が閉幕して5日後の3月14日より24日までニューヨークへ行ってきました。「インターナショナルアジアンアートフェア」に参加出展していた十数年間は毎年この時期2週間ずつニューヨークに滞在していましたが、今回はなんと3年ぶりでした。久々にASIA WEEK NEW YORKで美術館や各美術店の催し、サザビーズ、クリスティーズなどのオークションに参加して大へん充実した日々を過ごしました。懐かしい人たちとも旧交をあたため、「早くニューヨークに戻ってきて一緒にやろう」などと声を掛けられました。3月とはいえ、朝晩は氷点下の寒さでしたが、身体も心もピリッと引き締まる感じでニューヨークでは絶好調でした。
    ところが帰国後、風邪を引き体調を崩しました。やはり無理は効かない年齢になったかなとちょっと思いました。京都出張やNHK日曜美術館、フランス国営放送などの取材が重なり、また学会理事会、交換大会など休みが全く取れなかったことも回復を遅れさせたようです。しかしお陰さまで、今ではすっかり元気になりました。
    来る5月4日朝9時(再放送は5月11日夜8時)の日曜美術館では、45分枠で「世界を驚かせた北斎漫画」が放映される予定です。浦上蒼穹堂にもプロデューサー、ディレクター、カメラマン、スタッフなどがトータルで2日半来店、みっちり撮影して行かれました。久々に1500冊の「北斎漫画」を積み上げましたが、我ながら「ずいぶんたくさんあるな」と思いました。45年かけて1500冊集めたことになります。よろしければ5月4日放映の日曜美術館をご覧ください。
    明日4月24日(木)〜26日(土)の3日間、東京アートアンティークが開催されます。旧名称「日本橋・京橋美術骨董祭り」時代から数えて今年で22回目です。浦上蒼穹堂は1回目から参加していますが、近年来場者も多くなり、かなり盛り上がってきています。約80軒の参加店がそれぞれ趣向を凝らして展示や企画展などを開催するのですが、私どもは「北斎漫画」初編刊行(1814年)200周年を記念して「北斎漫画」展です。絵が良く、摺りが早く、保存状態が良いものを厳選して額装した作品約30点を展示します。しかし本来鑑賞陶磁を専門にしておりますので、やきものも見ていただきたく、今回は「北斎漫画」と一脈通じる飄逸さを持った古染付を約20点展示いたします。木・金・土の3日間とも10時〜18時の間、お待ち申し上げております。

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  • 今日で2月が終わります

    2月は東京で45年ぶりの大雪が、2度も降りました。ここは雪国かと一瞬思ったほどです。
    ここ2、3日は急に春めいた暖かさですが、明日からはまた寒くなるということです。
    三寒四温、不順な天候が続きますが、皆さまくれぐれも体調にお気をつけください。

    今日、『陶説』3月号が届きました。古染付特集号で、私も巻頭エッセイで「古染付礼賛」という駄文をを書かせていただきました。私が古染付を好きになったルーツから、江戸初期以来、古染付が日本人の心を捉えたわけや、そのデザインに官僚登用試験の「科挙」の影響が見られることなど、私が日頃思っていることを少しばかり書きました。古染付大好き人間の私としては、理屈はともかく、古染付の絵付けは本当に自由で型にはまらず見ていて飽きないことや、空間処理の妙をお伝えしたかったのですが、舌足らずの感は否めません。
    やはり本日、2月28日『中日新聞』の金曜寄稿欄に春画「展」考と題した私の駄文が載っています。いや載っているはずです、なぜなら私の手元にもその新聞がまだ届いていないからです。旧知の中日新聞文化部黒谷記者の依頼で原稿用紙4枚ほど書きました。内容は大英博物館で開催された「春画ー日本美術における性とたのしみ」展の見聞記と「大好評のうちに無事終了した」というマクレガー館長の私宛ての手紙などをご紹介したものですが、最後は以下のような文章で締めくくりました。「春画は、出版物に関しては23年前から無修正で流通していて何の問題も起きていません。本はよくて、本物は駄目というのもおかしな話です。春画に限らず美術品は、本物を見ることが何より大切です。そこに感動があるからです。見たい人は見る、見たくない人は見ない。当たり前の大人の文化を日本に1日も早く定着させたいものです。」

    アートフェア東京2014がいよいよ来週3月7、8、9日に開催されます。今年は例年より2週間ほど早い日程です。浦上蒼穹堂は「北斎漫画」初編刊行200周年を記念して、「北斎漫画」を展示いたします。ほかに北斎が75歳から発表した「富嶽百景」も同時に展示しますので、ぜひ比較してみてください。もちろん、専門である陶磁器も中国の新石器時代から漢時代の作品を中心にパワフルな世界をご覧いただきます。どうぞブースNo.R41へお越しください。
    なお、浦上は最終日3月9日(日)11時よりトークイベント「観る、買う、護る ー魅惑の木版画から古美術、現代アートまでー」に、サラリーマンコレクター宮津大輔さん、横浜美術館主席学芸員沼田英子さんと3人で登壇します。場所はアートフェア東京会場内トーク会場です。


    アートフェア東京2014

    会場: 東京国際フォーラム 展示ホール
    ブースNo. R41

    開催日時
    3月7日(金) 11:00 - 21:00
    3月8日(土) 11:00 - 20:00
    3月9日(日) 10:30 - 17:00

    http://artfairtokyo.com/gallery/8182.html

    トークイベント   http://artfairtokyo.com/event/16161.html


  • 遅まきながら 明けましておめでとうございます

    1月23日にもなって、新年のご挨拶というのも間の抜けた話ですが、やはり季節のけじめとして
    "皆さまには お健やかに佳き新春をお迎えのこととお慶び申し上げます"
    ちなみに今年の中国の旧正月(春節)は1月31日です。春節は中華圏で最も重要とされる祝祭日で、新暦の正月に比べ盛大に祝賀が繰り広げられます。

    さて、2014年の浦上蒼穹堂は、創立35周年を迎えます。ついこの間、30周年記念展をやったばかりと思っていましたが、月日が経つのは本当に早いものですね。今のところ35周年記念事業は特に考えておりませんが、3月6〜9日に開催される「アートフェア東京」、4月24日〜26日「東京アートアンティーク」、10月17日〜19日「東美アートフェア」に参加することは決まっています。特に「アートフェア東京2014」はボードメンバーの1人としてミーティングなどを重ねています。1月27日(月)13時半からパレスホテル東京で山本豊津氏らとともに記者発表会に登壇します。
    現在、江戸東京博物館で開催中の「大浮世絵」展は国際浮世絵学会創立50周年を記念した展覧会で、浮世絵の名品がずらりと展観されています。連日大盛況で1日平均3600人、土曜日はなんと6000人もの入場者があるそうです。私も国際浮世絵学会常任理事(4月からは総務委員長に就任予定)をさせていただいている関係上、大へん嬉しく思っていますが、あんまり混みすぎて人の頭越しにしか作品を見られないのでは、鑑賞者も満足されないかもしれません。その点、去る1月5日に閉幕した「大英博物館春画展」はゆっくり鑑賞できるように入場制限をしていました。昨夜、今回の大英春画展の立役者である、大英博物館日本セクション長のティム・クラーク氏とお会いし、いろいろお話をしたのですが、3ヶ月間の総入場者数は約9万人(当初予想の2倍)、その内55%が女性、鑑賞時間は入場者1人平均70分など非常に興味深い報告がありました。また来場者へのきめ細かいアンケートを実施し、その中に「情感が豊かで遊び心に富む日本人の隠れた一面を知り、日本人に対する印象が好転した」という内容のものもありました。
    我々関係者一同、引き続き春画展日本開催に向けて、一層努力することを確認しました。
    一昨日(1月21日)の毎日新聞朝刊では、青柳文化庁長官の「かつては娘たちが嫁入り道具として持って行くようなもので、ポルノグラフィーとは違った社会的存在であることを国内でも堂々と示すべきだ。」というコメントを紹介し、この記事を書いた女性記者は「大英博の展示で初めて実物に触れ、江戸時代の庶民の生活文化を表した興味深い美術作品、との印象を持った」と述べ、「春画は美術の一ジャンルであり、性をおおらかにとらえていたかつての日本人の意識を伝える文化財であるとの認識が広がりつつある」「大英博の展示が、近世文化のエッセンスが詰まった春画を自国の文化として見直すきっかけになってほしい」と特集記事を結んでいます。

    1月1日発売の「月刊ギャラリー1月号」に、詩人の小川英晴氏と私との対談が載りました。「本物を見る目 見抜く目」というタイトルで9ページに渡って大いに2人で古美術について語り合っています。小川氏は序文で「満を持してと言うべきか、いよいよと言うべきか、今月の対談のお相手はかねてより敬愛の念を抱いていた浦上蒼穹堂の浦上満さんである。」「浦上満さんは今も自ら信じる美を求めて中国陶磁の名器を紹介し続けている。読者諸氏も一度は浦上蒼穹堂を訪ねて数々の名品にじかに目で見、手にしてほしい。古代からの名品を観ずして現代美術を語るなかれ、これが浦上蒼穹堂に通って、私が得た結論である。」と述べておられます。よろしければ月刊ギャラリー1月号をご覧ください。

  • 良いお年をお迎えください。

    本日、12月28日(土)で本年の仕事納めとさせていただきます。
    秋に開催された東美特別展以降、本当にあっという間に時間が過ぎていきました。
    近況のご報告ですが、大英博物館で開催中の春画展は大評判のうちにいよいよ1月5日に閉幕します。予想をはるかに上回る来場者数とその反応の良さに主催者、関係者は大へん満足しています。
    ただ残念ながら、日本開催はまだ決まっておりません。私のところにも朝日新聞、毎日新聞、共同通信などいろいろなメディアが取材に来られますが、「なぜ日本で春画展が開催できないのか」という点に質問が集中します。東京大学の木下直之教授は読売新聞紙上で「わざわざロンドンにまで足を運んで、ようやく日本の文化遺産にふれるという奇妙な事態が生じている。」「何よりも問題は、日本社会の中にある偏見で、春画を見ないままに拒否する傾向が強い。食わず嫌いである。それは明治政府が下した全否定が今なお生きているということでもある。」と述べておられます。
    「芸術新潮」12月号では"大英博物館「春画」展がすごい"という大特集が組まれました。私も「当代春画界の名士たち」という小見出しが付いた写真で、木下教授、大英博物館のティモシー・クラーク氏、淺木正勝氏と一緒に紹介されています。
    本日発売の「目の眼」2月号でも"大英博物館へ春画を見に行く"という特集が組まれていて大英博物館日本セクション長・ティモシー・クラーク氏、ロンドン大学教授・アンドリュー・ガーストル氏とロンドン大学アジア・アフリカ研究学院研究員・矢野明子氏の鼎談が載っています。同じ号で脳科学者・茂木健一郎氏の「骨董体験記」に浦上蒼穹堂が登場しています。葛飾北斎の「富嶽百景」から「北斎漫画」、そして今が旬の「春画」論に話が発展し、とても盛り上がりました。茂木さんは北斎の筆力や構図に感嘆し「一体、日本人には個性も独創性もないという俗説は、何に由来するものなのだろう。」と述べておられます。また春画について「大英博物館が春画の本格的な展覧会を開くということは、つまり、それが「世界」の美術界の公式的な文脈の中で評価されるということを意味する。」「春画はポルノではない。むしろ、人間賛歌である。そのことを、私たち日本人は、皮肉なことに今やイギリスの人たちに教えてもらわなければならないのかもしれない。」「外からの眼を通して、私たちは、ようやく、私たちの祖先の持っていた温かい人間観に接続できるというのか。ものごとの本質を見えにくくしているものは、現代日本の中の、いったい何者なのだろう。」と
    喝破されています。私のことも「ご主人の浦上満さんは、好奇心に満ちた、文化を愛する人。一度説明を始めると、古美術への愛というエンジンに駆動されて、どうにも止まらない。」と記しておられます。
    洋泉社MOOK「画狂人 北斎の世界」(「北斎漫画」出版200周年記念!)が12月4日に発売されました。河野元昭先生はじめ樋口一貴氏、日野原健司氏、秋田達也氏などが執筆されています。私も「世界一のコレクターが教える『北斎漫画』のマニアックな楽しみ方」という題で「北斎漫画」について語っていますので、よろしければご笑覧ください。
    12月15日に発売されたPenの新年合併号では「浮世絵の正体。」という大特集が組まれています。「江戸の街に咲き誇ったポップカルチャー」という副題で、安村敏信先生はじめ浅野秀剛先生、藤澤紫さん、茜さんなどが案内人として解説されています。私も「北斎漫画」の案内人として登場します。合わせてご笑覧いただければ幸いです。

    今年も大へんお世話になりました。本当にありがとうございました。
    皆さま、どうぞ良いお年をお迎えください!